漢方治療・具体的な治療例
漢方薬を第一選択とする疾患・症候
第1位 不定愁訴・更年期障害・自律神経失調症
第2位 こむら返り
第3位 急性上気道炎
第4位 便秘
第5位 疲労・倦怠感
第6位 食欲不振・栄養状態改善
第7位 イレウス
第8位 アレルギー性鼻炎
第9位 月経不順・月経困難証
第10位 咳・痰
(株式会社ツムラ資料より)
訴えの多い患者さんや更年期障害・自律神経失調症のようにさまざまな症状を抱えて悩んでいる患者さんには漢方薬を使うことがあります。 こむら返りや風邪(急性上気道炎)には即効性のある漢方薬があります。 腹部手術の後や疲労・倦怠感のあるときに有効な漢方薬があります。
漢方治療・主な副作用
漢方薬は副作用がほとんどなく、西洋薬よりも安心して使うことができます。 副作用が出る場合は、処方が患者さんの「証(体質)」に合っていないことが主な原因になります。 専門医が正しく処方した漢方薬を正しく飲むのなら、副作用が出ることはめったにありません。しかし、体質や症状に合わない漢方薬を飲んだり、決められた量よりも多く飲んだりした場合は、症状が悪化したり、中毒症状や発疹が出たり、下痢をしたり食欲が落ちたり、といった現象が現れることがあります。
間質性肺炎
漢方薬を服用してから2~4週間後に見られることがある副作用です。息苦しい・乾いた咳・寒気のない発熱が主な症状です。症状は風邪に似ているので注意が必要です。
偽アルドステロン症
「甘草」という生薬を多量に摂取するとむくみ(浮腫)や高血圧を呈することがあります。甘草の成分の一つであるグリチルリチンが血液中のカリウム濃度を低下させることで起こります。筋肉の働きも落ちるので、脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢のけいれんなどの症状も出ることがあります。甘草はいろいろな漢方薬に配合されているので注意が必要です。
尿量減少
麻黄という生薬の入った漢方薬が排尿障害を起こすことがあります。高齢者の男性に見られます。麻黄の主成分は塩酸エフェドリンで、排尿時の平滑筋を緩みにくくして排尿困難を起こします。
このような漢方薬の副作用が現れた場合は、飲んでいる漢方薬を中止し、医師に相談してください。
漢方治療・西洋薬の限界
西洋薬の多くは、人工的に化学合成されたもので単一の有効成分から作られています。そのため、切れ味が鋭く、即効性があることが多い。
西洋薬による治療は「感染症の菌を殺す」「熱や痛みをとる」「血圧を下げる」といった1つの症状や病気に対する直接的な治療に適しています。即効性が高い反面、好ましくない作用が強く出たり、一度にいろいろな症状を解消する力に劣るという短所を持ち合わせています。 一方で漢方薬は天然自然に存在する植物、鉱物、動物などの生薬をいくつか組み合わせて作ったものです。「いくつか組み合わせてある」とは、有効に作用する点が複数あるということで、慢性的な病気や全身的な病気を治療する時など、複雑で多彩な症状に効果を発揮することが可能であることを意味します。
更年期障害、自律神経失調症、月経障害などのようにさまざまな症状を同時に抱えている患者さんにとっては、大きな助けになります。
西洋薬を患者さんの症状の数に応じていくつも処方するのではなく、西洋薬に漢方薬を加えて複数の症状に対処したり、漢方薬を中心に使いながら急性期の要所要所で西洋薬を使うなど、それぞれの長所を生かした新しい治療法が取り入れられています。
漢方治療・民間薬と漢方薬との違いについて
漢方薬は、体質、体力、性格などを含めた自覚症状(「証」)で薬を決めます。
病名が同じでも同じ薬を用いるとは限りません。
医療機関で処方される漢方薬(エキス剤)は生薬を原料に作られた漢方薬です。 生薬は自然に存在する薬で、木の根っこや葉っぱなど草根木皮が主です。植物なら何でも良いわけではなく、薬として何らかの作用(薬理作用)がある特定の植物に限られます。植物以外にも動物や鉱物由来の生薬もあります。 補完・代替医療、特に民間伝承医学で用いられる薬の中には、漢方薬ではないけれども生薬を用いているものもあり、「民間薬」と呼ばれることが多いようです。漢方薬との違いについて説明します。
① 民間薬はきちんとした理論ではなく、経験をもとに自己判断で用いられるものですが、漢方薬には体系だった理論があり、漢方医にきちんとした診断をしてもらって、あるいは薬剤師に調合してもらって用いるものです。
② 民間薬はほとんどが単独の植物(生物)からなり、使用量もまちまちであることが多いのですが、漢方薬はそれぞれ決まった数種類の生薬で構成されています。また、使用量もある程度決まっています。
院長ブログはじめます。
稲垣クリニック 院長の稲垣雅彦です。
ホームページのリニューアルに伴いまして、サイト内でコラムをはじめさせていただきます。
地域の皆様に、少しでも有益な医療情報となるコラムになれば幸いでございます。
院長 稲垣雅彦